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※実際に受診を検討される場合には、直接医療機関にもお電話で問い合わせいただくことを推奨いたします。
私自身には医業を継がなければならないというようなことはなく、職業を選択する自由が与えられていました。学生時代に将来をどうしていくのか考えた時、当時漠然と医師という仕事に自分で道を切り開いて自分の考え方で進めていけるというようなイメージを感じ、医学部を目指し弘前大学医学部に進学しました。
整形外科を選択しようと思った時期は、医学部6年生の夏だったと思います。希望者を募っての実習に参加したのですが、整形外科の医師が救急診療の中で交通外傷の患者さんなどに対して機敏に対応されている姿に感化され、整形外科の医師になろうと思いました。
弘前大学医学部を卒業後はそのまま弘前大学の整形外科学教室に入りました。医師となって1年半程した頃に、順天堂大学の山内裕雄先生(現:順天堂大学名誉教授)が青森に脊柱側彎症の講演にいらっしゃったことがあり、お話を伺っていくうちに、その先生に師事したいと思い順天堂大学の整形外科学教室の門をたたきました。
順天堂大学に来てからは、関連病院で勤務をするなど様々な場面で研鑽を積んで来ましたね。整形外科医の中でも手や足、脊椎など、それぞれ専門性を持つ医師が多くいるのですが、御茶ノ水にある順天堂大学の本院の先生方もそういった専門性を持つ先生方が沢山いらっしゃいました。そのため、私も関連病院での勤務から本院での勤務に戻った頃から何か専門を持ちたいと思うようになり、当時、順天堂大学で股関節を専門にしている先生に師事する形で股関節の手術を数多く見せてもらう経験をしました。そこから股関節を専門にして30年以上経ちましたね。
当院では整形外科の中で、特に股関節の専門外来を設けていませんが、股関節の専門医6名が治療を行なっています。股関節に関する疾患を幅広く対象として、診療をしていますが、具体的には女児に多い先天性の股関節脱臼や大腿骨の血行障害を起こしてしまうペルテス病、成人期に多い変形性股関節症や大腿骨頭壊死、関節リウマチなどが多いですね。若い方の股関節症では、骨切り術と呼ばれる手術や比較的高齢者の方では人工股関節置換術を多く行なってきました。股関節の骨切り術は行なっている施設が少ないので、手術を受けに遠方からいらっしゃる方も多いですね。
また、当院はスポーツ整形外科も掲げており、アスリートやスポーツをされる方の股関節の異常も診療することがあります。例えば、クラシックバレエや女子サッカーなどでの股関節の曲げ伸ばしが多く、負担がかかりやすい競技をされている方などが受診されることがあります。
まず、外来で症状を伺い、画像検査の結果などを加味して手術が必要か評価します。当然のことですが、手術となると多くの方が不安に思われています。そのため、実際に手術を行うかどうかはご本人の希望を聞きながら決めていきます。外来でも手術が不安という話はよく聞きますし、手術時間はどれくらいかかるのか、入院期間はどれくらいになるのか、日常生活や仕事、スポーツへの復帰はいつから可能なのか等、よく質問を受けます。そう言った疑問や不安は手術を受ける側に立つと当然のことですよね。手術を受けると決まった場合でも変形性股関節症や関節リウマチ、大腿骨頭壊死などでは、自分の関節を温存して行う骨切り術と、人工関節に交換する手術がありますので、どういった手術を行うかなど、十分に時間をかけて相談を行い、色々な疑問が解消され、気持ちの整理が整ってから手術を行うようにしています。
人工股関節への置換術を行う際には、人工関節の入れ替えがどのくらいの期間で必要になるのか質問されることがあります。近年、人工関節も品質が向上していますし、ご年齢や生活環境によっては入れ替えが必要になるとも限りません。患者さんごとに痛みや股関節の状態を勘案して検討していきますね。
その後、手術を受けるとなったら、輸血の準備に2週間ほど期間をいただいています。手術には輸血が必要になる場合があるのですが、当院では患者さんご自身の血液を使用する自己血輸血と言う方法で行うことが多いです。自己血輸血の準備として、患者さんご自身の血液を貯める必要がありますので、通常では手術を受けられる前に1週間に1度400mlの採血を2回行っていただきます。
通常の人工股関節全置換術では手術後の入院期間は概ね2〜3週間になりますが、経過などによっては3週間となることもあります。リハビリも入院中から開始し、退院後はかかりつけの医療機関など、通院しやすい医療機関で継続していただいています。
股関節の手術では大きく分けて自分の関節を温存して行う骨切り術と人工関節置換術が選択されますが、先ほども述べた通り骨切り術は行なっている施設は少なく、当院の特徴の一つと言えると思います。
人工股関節置換術では、人工関節を正確な位置に入れるためのナビゲーションシステムというものがあります。これは、手術の前に撮影したCT画像のデータを手術室のシステムと接続し、手術中に人工関節を入れる位置を精確に計算してくれるというものです。当院では13年前の開院時から、ナビゲーションシステムを導入しており、システムの開発早期から導入していると言えますね。
診療では、患者さん自身が手術に対してどのような思いを抱えていらっしゃるかを汲み取り、不安を解消することが大事だと思っています。
治療によって患者さんが歩けるようになり、喜んでおられる姿を見られるのは本当に嬉しいですが、これまでに沢山の経験を積んできましたので、時には思わぬ合併症が生じてしまうこともあり、印象に残っています。
症状や検査の結果によって、手術を提案しますが、一方的なコミュニケーションとならないよう、手術についてどのように捉えられていらっしゃるのか、必ず患者さんと相談するようにしています。
整形外科の手術は、今後も手術自体が進化、洗練されていくような気がしますね。より低侵襲な術式も増えていくのではないでしょうか。
また当院は開院して13年が経ちます。練馬の地域には大きな病院がなかったこともあり、地域の方々に貢献するという理念で開院しました。今では地域の方々から多く受診していただいており、信頼していただける病院づくりが出来てきたのではないかと思っていますし、これからも安心で安全な医療を提供できるようにしていきたいですね。
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