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土井 卓子 先生

乳癌手術の名医
湘南記念病院
かまくら乳がんセンター センター長
専門
乳がん治療
掲載開始日:2016年09月26日
最終更新日:2022年08月03日

臨床実績


年間乳癌手術数
***

専門医資格
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学会職位
***

学術活動


論文・学会発表数
*** 件
※件数は英語論文を含まない場合がございます

最終論文・学会発表年
*** 年

学術機関
***

出身大学
***

略歴
***

受診しやすさ


手術までの待機期間
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医師指定受診
***

外来待ち時間
*** 時間程度

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土井 卓子先生のインタビュー

公開日:2018年10月30日
乳がんになっても何かひとつ良いことがある。一緒に泣いて笑って、大丈夫と言ってあげたい。

土井先生はこれまで乳腺外科に一貫して取り組まれておりますが、乳腺外科を専門にしようと思ったきっかけはあったのでしょうか?

私が乳腺外科を専門としようと思ったのは医学部を卒業してから、2年間の研修に出たときでした。当初は小児科の医師になろうと思い、研修でも外科、形成外科、麻酔科、小児科を周っていたのですが、ある時、乳がんの患者さんに呼び止められ「乳がんの手術をしたのだけれど、何か形を補正できる下着はないか」と尋ねられました。当時はまだまだ女性の外科医は少なく、患者さんから男性医師には聞きにくい女性特有の悩みを相談されたことで、女性の乳腺外科医が必要だと実感し、乳腺外科を専門にすることにしました。

乳がん治療では患者さんの治療の選択肢も増えましたが、土井先生が診療をする上で大切にされていることはどのようなことでしょうか?

これは日頃患者さんが治療に迷ったときに大切にしていることなのですが、私は治療方法や治療効果についてきちんと説明をした上で必ず「あなたの今の乳房の価値観はなんですか?」と尋ねます。

私が医師になった頃は、乳がんの治療というと手術以外に選択肢はなかったのですが、現在では抗がん剤や様々な治療方法が開発され、どの時期に治療を受けるかなど患者さんが選択できるようになってきました。

治療の選択肢が増えたため、患者さんは乳がんと診断されて気が動転してもおかしくはない状況で、乳がんについて受け止め、更には治療法や治療の時期を選択するということで、「え、どうしたらいいの」と迷われてしまう方も少なからずいらっしゃいます。

例えば、乳房再建を今行っても、数年後に行っても治療成績にあまり差がないといわれたら、どの時点で行うか選択する余地があります。ある方は、息子さんが受験を控えていて、差がないのなら、今は息子さんの受験にお金を使いたいと話されました。患者さんの乳房の価値観はその人やその時の状況によって変化するので、今、乳房がどんな価値観であるかという事を大切にして治療していますね。

湘南記念病院の乳がんセンターでは、乳腺手帳(ピンクリボン手帳)の配布や、患者さんと一緒に温泉旅行に行く企画をされたりと、手術以外にも乳がんを総合的に治療・サポートされていることが特徴のように感じましたが、貴院の活動について具体的に教えてください。

確かに、当院では手術や治療をしたら終了ということではなく、乳がんの患者さんを包括的にサポートしていることは特徴かもしれません。これは、患者さんからの「あったらいいな」を集めていったら、次第にスタッフや患者さんも自発的に活動をするようになり、このような形になっていったのです。

患者さんに配布している乳腺手帳も配り始めてから20年以上経つのですが、改良を重ねて今の形になりました。当初はカルテに書いてあることを患者さんにも知ってもらいたいという思いから作りました。手帳には、いつ手術を受けたか、どのような薬剤を使用したか、リハビリではどこまで手を挙げられるようになったかが書き込めますし、他にも、がんと言われた時の気持ちを書いてもいいし、何を書いてもいいのです。自由に使っていただいて、日記や連絡帳にも使えるようにしています。

温泉旅行についても、患者さんからの「人目が気になり温泉に行けない」という言葉から企画しました。旅行を通じて、病気と向き合うことができればいいなと思い、毎回、「浮腫」や「お化粧」、「不安」などについてお話をしています。初めてがんと告知されたばかりの方から転移している方まで様々なステージの方がいらっしゃるのですが、温泉旅行後には気持ちが前向きになる方が多いですね。乳がんとわかってから自分を解放できる機会がなかった方が、みんな同じ病気を抱えていて、どんな悩みも話してよいということで、気持ちが発散でき、元気になるようです。温泉では、乳房を隠すようにタオルを巻いて入浴する許可もいただいているのですが、実際には再建された乳房を触ってみたりと、患者さん同士だからこそできる交流もあります。

他にも抗がん剤や放射線治療の副作用に対してのケアも行っています。例えば、抗がん剤では味がわかりにくくなってしまうことがあります。医師だけではサポートできないことも多く、最初は食事のレシピを栄養士や患者さんから聞いていたのですが、それならみんなで作ってみようということで栄養士さんが中心となって食事を作る企画も行っています。そこで評判の良かったレシピは誰でも見られるように乳がんセンター内にあるピアルームで公開しています。
副作用で眉毛が抜けてしまう患者さんに対して、眉毛が抜ける前に医療用のアートメイクをしようと看護師が中心となって勉強をしていたり、術後のリンパ浮腫が強い患者さんを楽にしてあげたいと専門の資格をとったりしています。

日頃からスタッフにはそれぞれの専門的な立場から話をしてもいいと伝えています。例えば、告知直後にショックを受けてしまう患者さんもいらっしゃいます。そんなときに看護師が別室で話を聞いて寄り添ったり、今後のアドバイスをしたりしています。これも私がやりましょうと言ったことではなく、スタッフみんなが自発的にやってくれています。本当にみなさんのお陰で総合的なケアをできるようになりました。

医療従事者だけではなく患者さん同士の助け合いも含めてトータルケアになっているのですね

どうしても医療従事者だけでは解決できない問題もあります。例えば、ご家族はどうやって患者さんを支えたらいいだろうかとか、ご家族にどうやってサポートをしてもらったらいいだろうかとか、性生活はどうしたらいいかなど色々な悩みがありますよね。
ピアルームでは週に1度、専門のカウンセラーを招いて、こころサロンというスペースを作っていますし、同じく乳がん経験をされた方に話を聞いてもらう場も設けています。ピアルームには書籍やパンフレットを沢山おいて自由に閲覧できるようにしているので、これらをきっかけに話をして貰えればいいなと思っています。

他にも患者さんが帽子を作って来てくれたり、マスコットを作ってくれたりしています。患者さんのお子様が患者さんを励ますために作ってくれたマスコットが広がり、今では診察室に置いて、勇気が欲しい患者さんにお渡ししたりしています。生検をする前に緊張されている患者さんに渡したりすると、ちょっと気が紛れたり、元気をもらっているようです。

 院外でも横浜市水道局からも乳がん啓発の「はまっ子どうしThe Water」×「ピンクリボンかながわ」のピンクリボンボトルを作ろうというお話をいただきました。様々なところから自発的に乳がんのために協力してくださることは本当に嬉しく思いますね。

これまでの治療の中で印象に残っている患者さんはいらっしゃいますか?

乳がんという病気は同じでも、ひとりひとり本当に違った人生があって、どの患者さんのことも本当に印象に残っています。例えば、シングルマザーで子育てをされていた患者さんの話ですが、この方は乳がんが他の臓器に転移しており、全身状態が悪くなってしまい、お子さんやご家族にきちんとお話をしなければならないという状況でした。漸く患者さんのご兄弟やお子さんにお話をする機会を設けたのですが、その前日にご兄弟やご両親の住むご実家が被災してしまったのです。ご家族に連絡がつかない状況で患者さんも私たちもどうすることもできませんでしたが、そうしたら、患者さんのご兄弟のお子さんが東京にいらっしゃって、自分の両親もどうなっているかわからないという状況なのに一緒に話しを聞いてくださると駆けつけてくれました。その後も容体は悪化していったのですが、ある日の朝、被災されたご家族が、全員無事だったと連絡がつきました。そのとき、とても喜んでいた表情を今でも覚えています。そのことを知った後、その方は安心されたのか、急速に容体が悪くなり午後にはお亡くなりになってしまいました。ご実家のことや容体のことで激動の数日間だったので、患者さんのお子さんは気持ちの整理ができていないだろうと案じていたので、お見送りをする際に「ありがとうございました」と頭を下げられたときには言葉が見つかりませんでしたね。

他にも亡くなる直前に、「先生、私は自分の子供にいっぱい甘えさせたかったけど、私が居なくなった後に寂しい思いをさせてしまうと考えたら、お父さんに懐いた方がいいと思って、厳しくしてきました。でもやっぱり抱きしめてあげればよかったとも思うんです」とおっしゃられ、一緒に泣いた患者さんもいらっしゃいました。
本当に日々、患者さんと一緒に泣いて、笑っているので、何が特別とは言えないほど印象に残ることばかりですね。

乳がんの診療をされる中で、日々実感されることはありますか?

乳がんと宣告されることはとても辛い体験ですが、それが現実でもある訳ですよね。語弊を恐れずにお伝えしますが、患者さんに乳がんであることを告げたり、一緒に治療をしていくときには、「乳がんになっても何かひとつは乳がんになってよかったと思えることがある」ということをお伝えしています。

例えば、結婚を目前にして乳がんとわかり、結婚ができなくなってしまった患者さんがいました。それはとても辛い状況でしたが、その後、乳がんのことも含めて好きと言ってくれる男性と出会い、結婚されました。本当の意味で彼女を理解してくれる男性に出会えたのだと思います。他にも、反抗期の息子さんがいらっしゃったお母さんでは、それまで殆ど口を聞いたこともなく、喧嘩ばかりだったそうですが、乳がんをきっかけに家族とも向き合い、息子さんとも話ができるようになったそうです。

生きることに向かい合うなかで、何かひとつは良いことがあるのです。だから簡単なことではないですが落ち込みすぎないで、肩の力を抜いて、大丈夫と言ってあげたいですよね。

これまで沢山の患者さんと向き合って治療をされてきた土井先生が、乳がんについて知っておいて欲しいことは何ですか?

乳がんは今や11人に1人がなる病気です。乳がんにも様々なタイプがありますが、検診を受けることによって早期に治療ができれば死亡率も下がり、予後の悪い癌ばかりではありません。まずはどんな場合も自分が乳がんであることを知らなければ始まりません。

どんなに啓発をしても人間はどこかで「自分は大丈夫」と思ってしまいますが、誰もが乳がんになる可能性があります。自分が乳がんかどうか知るために積極的に医療機関や市区町村の制度で受けられる検診を活用してほしいです。また検診を受けている方や男性からも、自分のご家族に乳がん検診を受けたか尋ねてみて欲しいです。乳がんの症状が出る前に検診でわかれば、ご家族の今後も変わってきます。

そして乳がんとわかったときには、インターネットの検索だけではなく、本や学会の出している患者さん向けのガイドラインなど質の良い情報を選んでください。正しい選択をするためには、色々な情報に惑わされず、情報を精査する必要があることも覚えていて欲しいと思います。

土井先生は乳がんという女性のアイデンティティに関わる部位を診られてこられました。これまでの様々なご経験から患者さんへメッセージをお願いします

私は女性に自分をコントロールする方法を学んで欲しいと思っています。例えば、女性は月経の度にホルモンの変化や痛みを伴い、イライラしたり、落ち込んだりと気持ちも変化すると思います。そうしたときに、その状態を自分でどうコントロールすればよいのか考えて欲しいです。生理の前にはチョコレートは避けたり、好きな音楽を聴いたりと自分なりのリラックス方法を知っておくということはとても大切なことです。様々な感情を自分でコントロールすることは、社会に出ていく上で大事なことなのですが、日本ではそのような必要があることを教えてくれる人や機会があることは多くはないでしょう。高校生や大学生というような時期に一度立ち止まって自分の身体と心を自分でコントロールする必要があるということを知る機会が必要と思います。女性としてどう振る舞い、どう生きていくか一度考えてほしいなと願っています。

湘南記念病院の写真

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