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父親が開業医をしていたこともあり、幼少の頃から医業を身近に感じ、自然と医師を志したように思います。将来的には父の医院を継ぐことを考えており、そのためにはエックス線写真も読めなければ困ると思い、日本医科大学卒業後に放射線科に入局しました。
放射線科と言うと基礎的な研究が中心となる大学も多かったのですが、日本医科大学の放射線科は当時としては珍しく臨床放射線医学をテーマとしていたからです。
その後、CTやMRIが普及し始め、更にはIVR(Interventional Radiology:画像下治療)など放射線医学の新しい領域が立ち上がった時代でもありました。30年以上、放射線科を専門としてきましたが、振り返ってみると、新しい放射線医学の黎明期からの医療の移り変わりに立ち会うことができたのは感慨深いですね。
また、私が医師になった頃は今よりも交通事故が多く、社会的問題にもなる程でした。日本医科大学は全国的にも救急救命医療が有名でもあり、毎日昼夜を問わず患者さんが運ばれてきていたので、放射線科では連日連夜呼び出しを受けて、カテーテルを用いた止血術を行っていましたね。大変でしたけれど、その分やりがいも実感できました。
これまでは全国的にも臨床放射線医学の領域では、肝臓がんに対するカテーテル治療である肝動脈化学塞栓療法(TACE)と言う手技を得意とする施設が多かったと思います。しかし、抗ウイルス療法によって肝臓がんの前段階であるB型C型肝炎の治療成績が格段と良くなってきたためか、肝臓がんに罹患される患者さんは全国的には減ってきています。そのため、多くの施設でこれまでとは違うカテーテル治療にも注力するようになってきているかと思います。
私は、現在下肢静脈瘤の治療にも力を入れています。
静脈には血液が逆流しないように弁があるのですが、下肢静脈瘤では足の皮膚表面近くを走る静脈の弁が壊れてしまうことで、血液が心臓に戻りにくくなり、うっ滞した血液によって静脈が拡張し、蛇行や瘤が生じます。下肢静脈瘤はご年配の方に多く見られるのですが、特に出産を経験された女性や立ち仕事をしていらっしゃる方に多いとされています。症状としては、足の重だるさやむくみを訴える方も多いですし、うっ滞性皮膚炎といって血液が長時間うっ滞することで炎症を起こし、かゆみを伴う湿疹だけでなく足の色が黒く変わり潰瘍をつくってしまうこともあります。そこまで悪化させてしまうと、なかなか治りません。
整容上の問題として、うっ滞性皮膚炎以外にも瘤自体を気にされる方も多いですが、瘤があるからだけで治療適応となる訳ではなく、下肢静脈瘤に伴う足の痛みや皮膚炎の症状など、医学的な適応を慎重に判断し適応がある場合に治療対象としています。
患者さんにお話を伺うと、なかなか静脈瘤のことを周囲に話せず、日頃足を隠して過ごされるなど、長い間お悩みになっていらっしゃる方が多いように感じます。
地域の皮膚科の先生から皮膚炎でお悩みの患者さんが紹介され、検査の結果、原因が下肢静脈瘤にあるとわかる患者さんが多いです。ご年配の方ですと内科や整形外科で足の皮膚の色やむくみについて相談した際に下肢静脈瘤が疑われ、紹介となる場合もあります。
患者さんの状態にもよりますが、下肢静脈瘤治療は主に日帰りのレーザー治療で行っています。治療にかかる時間は約1時間ですが、治療後は1時間程度お休みいただいて、お帰りいただくことが多いです。
治療にかかる時間が約1時間といっても、局所麻酔などの治療前の準備もあるので、実際にレーザーを照射している時間は数分程度です。
基本的には半日で受けられる治療ですので、患者さんが拘束される時間は短く、以前よりはだいぶ楽に治療を受けられるのではないかと思っていまます。
日本語では画像下治療と呼ばれますが、臨床放射線医学の中でもIVR(Interventional Radiology)と言う領域についてはまだまだ国民の皆さまに周知されていないのではないかと思っていますので、広く知っていただくためにも、様々なところで講演をしています。IVRはエックス線(レントゲン)やCT、超音波などの画像診断装置を駆使して体の中を透かして見ながら、カテーテルや針を標的となる部位まで導き、病気の治療を行う分野となります。病変を確認するために手術をする必要がないので、低侵襲でお身体に優しいことが特徴です。
日本IVR学会では、皆様に広く周知していただくための広報用ビデオも作成しました。是非ご覧いただければイメージも深まるかと思います。
放射線科では画像診断にAIの技術を取り入れる研究が多く行われており、今後はこの技術をどう活用するかが大切になってくるかと思います。AIは画像を判断して、疑わしい疾患を教えてくれますが、何故その診断が疑われるのか判断の根拠となる部分は教えてくれません。医師は臨床の現場では診断だけでなく、診断に至る過程をとても大切にしていますから、診断にどのようにAIを取り入れていくかということが重要になると思います。
健康診断などでは画像が決め手となって診断がつくことがよくありますし、画像診断はとても大事ですので、いかに根拠を持って納得のいく診断ができるのかが大切です。
田島先生は、日本スカンジナビア放射線医学協会の交換留学生としてカロリンスカ研究所病院に留学されたご経験があり、また様々な疾患における血管内治療のガイドライン作成に携わられるなど放射線を用いた診断・治療の領域に深い造詣がある先生です。インタビューでは終始お話しやすい雰囲気を作ってくださり、丁寧に疾患や治療方法について説明してくださいました。また、海外の画像共有システムについても実際にご経験されたことを踏まえて詳細にご教示くださいました。2020年4月に院長を務められていました日本医科大学武蔵小杉病院から、埼玉医科大学国際医療センター画像診断科に異動されました。
受診される際も、的確にお話ししてくだるかと存じますので、安心してご相談いただけるかと思います。
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