私は、精神科医になりたくて医師になりました。子どもの頃から大きなことを考えるのが好きで、宇宙や哲学、宇宙物理学などに興味がありましたが、残念ながらそういったセンスがなく、もともと人と話したり、人を観察したりすることが好きだったので、精神科医になろうと中学~高校の早い時期に決めました。精神科医になるために医師になるというのは、結構特殊なパターンかもしれません。
また私は手先が器用で体力もあったので、研修医時代は外科などからも誘っていただきました。手術は面白いしやりがいもあるのですが、精神科医は年を取っても年齢や人生を重ねるごとにレベルアップしていくことが出来るかなと思い、長くじんわりやっていけるのも良いなと思い初志貫徹しています。
当院は、2018年10月に前院長の秋根 良英先生から引き継ぎました。秋根先生の時代は認知症を多く診ていたので、引き継いだ当初はご高齢の患者さんが多かったのですが、ホームページなどを充実させてから20~40代のお若い方の受診もかなり増えてきました。今はネット予約などを利用される方も多いです。クリニック全体では10代から90代以上まで、出来る限りどのような方でも診るようにしています。疾患で言うとお若い方の場合はやはりうつ病やパニック障害などが多いですね。高校生や大学に入りたての10代の方では不登校や適応障害なども多いです。未成年の方については、初診時は保護者の方に付き添いをしていただき、それ以降は保護者の付き添いが必要かどうかはケースバイケースでご相談しています。
当院は働いている方でも仕事帰りに受診できるように、曜日により20時と遅い時間まで診察していますので、朝はご高齢の方、午後は主婦層の方、夜は働いているサラリーマンの方など、時間帯によって受診される層は異なってきています。日曜日に受診したいという方もいらっしゃると思うので、近いうちに日曜日にも診察できるような体制にしていきたいと思っています。また精神科では小さなお子さんの精神発達の問題なども対象になりますので、今後は物心ついた頃のお子さんからご年配の方まで、広い領域でいつでも診られるような体制にしたいと考えています。
また、もともとこの地域はメンタルクリニックが多くはなく、以前から患者さんが初診予約を取り辛いと言った状況がありました。当院でもまだまだ地域のニーズに応えられていないと感じ、初診予約はなるべく早めに受け入れられるように努めています。一般的にメンタルクリニックでは、当日初診を避ける傾向があります。しかし私は「いま困っている方」こそメンタルクリニックを受診できるようにしたいと考えており、本当はご希望があれば当日にでも受け入れたいと考えています。現在はまだそこまで体制が整っておらず、難しい場合もありますが、出来るだけ1週間以内の初診受け入れを心掛けています。
そもそも訪問診療を始めたいと計画していたこともあり、そのためにはもっと医師を増やす必要があると感じていました。現在は徐々に医師も多くなり、外来だけで10名の医師がおります(2019年5月時点)。なかには精神科領域のスペシャリストだけでなく摂食障害を診るような心療内科の医師もおり、患者さんのニーズに合わせることができますので、患者さんにも担当医を替えて良いですよとお伝えしています。実際に変更される患者さんもいらっしゃいます。相性があると思いますので、何だか話しづらいなと感じられた際はご遠慮なく受付にひと声おかけ頂ければと思います。医師もその前提で診療しております。
訪問診療では外来に来るのが困難な方を対象に、24時間365日対応しています。訪問エリアは、船橋市をはじめ、隣接している習志野市、八千代市、市川市、鎌ヶ谷市、白井市などにも伺います。もともと当院の外来を受診していた方が訪問診療に移行する際には出来れば元々診ていた担当医が伺うようにしていますが、難しければ私や副院長などが伺います。現在はまだ訪問診療を本格的に始めてから1年経っていないということもあり、外来移行を含めて認知症の方が約7割を占めていますが、若い方のパニックや引きこもり、慢性期の統合失調症などメンタル領域メインの訪問も随分増えてきました。内科医も充実させ、癌患者の方のお看取りなども行っております。
今後訪問診療に関しては、精神科以外にも様々な疾患を診られる総合病院のような体制にしていきたいと考えています。母体はメンタルクリニックではありますが、お家で診ないといけない患者さんについてはあらゆる領域、科目の医師を揃え、どのような疾患があっても全て診られるようにしたいと思い、そのための体制を整えているところです。
精神科の診断をつけるためにはまず身体疾患を除外する必要があり、そのためには一般的な身体科の知識が必要です。またそもそも精神科・心療内科医は患者さんやご家族のお困りのことを聴くことが大事な仕事です。「身体とこころをきちんと診察し、環境調整や心理指導を含めて治療する」というスタンス。私は実は精神科・心療内科医こそ在宅訪問診療に適しているのではないかと考えており、当院では精神科・心療内科医を基盤として各科専門医、各業種がチームを組む訪問診療のかたちを目指しています。
精神科の患者さんの中には病院まで来ること自体が難しい方もいらっしゃるので、訪問診療をしなければ医療に繋がれない人もいると思いますし、実際まだ繋がれていない方もたくさんいらっしゃると思います。行政や地域病院と連携し、ご家族の方が困って保健所などに相談された場合に当院に繋いでいただくこともありますし、ご家族向けの相談も行っておりますので、ホームページなどを経由して直接ご家族から連絡をいただくこともあります。ニーズは大変多いはずと思いますが、今はまだ私たちも手探りという状況ですので、是非この記事をご覧いただき、お困りの方はご友人、ご家族からのご連絡でも結構ですので当院へまずご連絡頂ければと思います。
私は訪問診療だけでこれまで述べ2万人以上の患者さんを診させていただいていますが、医療の現場だけでなく、保健所の相談業務などにも携わっていました。なかには保健所だけでは対応が困難なケースもあり、いざ訪問してみると日用品やごみ袋の中に埋もれて唸っていて、慌てて救急搬送したこともありました。家の外からはわからず、ご本人もどうしようもないケースも多いと思いますので、やはり医療者の訪問は必要なことだと思っています。
また、パニックや対人恐怖で家から出られなかった患者さんが診療を重ねて改善し、外に出られるようになったようなケースもあり、そういう際は訪問診療をした甲斐があったなと非常に嬉しく思います。
まず患者さんのお話をよく聞いて、患者さんの心情や置かれている状況について想像し、共感するということが第一です。私自身、実は幼少の頃は身体が強くなく、よく病院に行っていたのですが、当時は横柄な態度だったり怒ったりする先生も多く、病院が大嫌いでした。医師になるにつけ反面教師として自分はそうはなりたくないなと思い、よく話を聞き、患者さんに寄り添えるような診療を心掛けています。
もともとハードルの高い科だと思いますので、あまり難しく考えずに軽い気持ちで受診していただけたらと思っています。私はご相談いただいた内容について怒ったり、来るなと言ったりすることはありませんのでご安心ください。「なんだか辛い」、「悲しい」と感じたり、普段と違う辛さに捉われたり眠れなかったりする場合にはご遠慮なく受診してください。何かしらのアドバイスができるかと思います。
現在、法人の理事長をしていますので、法人としてはどのような患者さんでも診られるような体制を整えていきたいと考えています。また、医師というのは自分のもとを訪れた患者さんを診る、学会で勉強をする、専門性を高めるなど日常の診療をこなす中で意識が外に向かずつい自分のテリトリーの内側に向いてしまう傾向があるように感じますが、精神医療においては医療が必要なのに受けられていない、現状の医療の枠組みの外側にいらっしゃる方もまだまだ多いと思っています。なので、外に目を向けることを心がけて、精神科医が関わる分野をもっと広げていく必要があると考えております。訪問診療を始めたのもその一環です。
診療する場自体を増やしていくことで助けられる患者さんを増やせると思うので、医療過疎地なども含めて分院を作るということも考えています。医師も都心のオフィス街にあるクリニック、郊外の地域に根差したクリニック、訪問診療、医療過疎地のクリニックなど、色々な場所で診療を経験することで学べることも多いと思いますので、分院のなかで医師を循環、流通させていくことで医療過疎の問題にも対応出来ないかなどと考えています。
医療過疎地に対応するのは日本全国隅々までと考えるとなかなか難しい部分もあると思いますが、小さい規模でも、まずは当法人の中で医師に様々な地域で働いてもらうようなシステムを作ることで、少しでも医療過疎地の医療に貢献出来たら良いなと思っています。
また私は若い時にバックパッカーとして世界を旅したことがありますが、世界中には想像もつかないくらい素晴らしい場所、景色、自然、文化などがあります。繰り返す日常の中で疲れたり迷ってしまった人や若者などで行ける人を連れて世界を訪れることなども転地療養の一つのような形でやってみたいですね。次世代を担う若者への心理教育のようなものも出来れば良いなと思っています。
きたなら駅上ほっとクリニック様は、北習志野駅から直結しており、通院にとても便利な場所にありました。松本先生は、水球で鍛えたというがっしりした体格でしたので、一見、体育会系の威勢の良い先生かと思いきや、非常に優しい口調でお話してくださりました。診療時間を延ばしたり、医師の人数を増やしたり、訪問診療を始めたりと様々なことに取り組まれており、取材を通じて、先生の少しでも多くの患者さんを救いたいという熱い思いが伝わってきました。
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