※掲載情報は独自の調査・分析により収集しており、最新かつ正確な情報になるように心がけておりますが、内容を保証するものではありません。
※実際に受診を検討される場合には、直接医療機関にもお電話で問い合わせいただくことを推奨いたします。
私が医師になったのは1982年ですが、ちょうどその頃はアメリカで急速に睡眠医学の分野が発展してきた時期でした。その動向に注目していたこともありましたし、睡眠は定量評価するための検査方法が確立しており、客観的な評価がしやすいところが良いなと思い、睡眠医学を専門にしようと決意し、鳥取大学の大学院に進学することにしました。
年齢とともに睡眠の構造が不安定になるため、高齢の方は眠りが浅くなり、不眠症になりやすいといわれています。さらに、上気道の筋肉の弾力性が低下し、喉が閉塞しやすくなることで、睡眠時無呼吸症候群にもなりやすくなるといわれています。そのため、高齢化の進んだ日本では今後、睡眠障害でお悩みになる方が増えると予想されていますが、現時点ではまだ高齢の方の睡眠障害がそれほど増加しているといった実感はないです。
しかし、夜間の不規則勤務は増えていますし、パソコンやスマートフォンの普及により、これらを夜遅くまで操作する方も増えてきています。そういった生活習慣の乱れによって、お子さんや若い方でも睡眠障害を抱えている方が増えてきています。中には、「死んでもスマホを手放しません」というようなスマートフォン依存症の方もいるので、そのような方の場合には、依存症を専門にしている医療機関での専門的な治療が必要になります。
睡眠障害は不眠症以外にも睡眠中の異常行動や異常運動、体内時計の変調によって生じる概日リズム障害、睡眠中に突然呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群など多岐にわたり、国際分類では90以上の疾患に分類されます。
当院では、様々なタイプの睡眠障害についてオールラウンドに対応できるよう、精神科や呼吸器内科、歯科、耳鼻咽喉科、循環器内科などの医師および臨床心理士が協働して診療を行っています。患者さんの状況によっては複数の領域に跨って診療が必要な場合もあり、一人の医師が担当する場合もあれば、複数の医師で診る場合もあります。例えば不眠症と睡眠時無呼吸症候群を併発している患者さんの場合、精神科と耳鼻咽喉科の二名で担当を行うこともあります。
大学病院などでは、複数の診療科の医師が協働してカンファレンスを行うこともあるようですが、当院のように診療を相乗りで行っている医療機関は数少ないと思います。また、睡眠障害専門の医療機関は国内に約100施設あるといわれていますが、多くの先生は睡眠障害のなかでも睡眠時無呼吸症候群を専門にしており、大都市に集中している傾向があります。地方によっては睡眠障害を専門にしている医療機関がない地域もありますので、当院にも遠方から受診される方がいらっしゃいます。
患者さんは都内の方が多いですが、先程もお話したように遠方から来られる方も多く、東北や北越、北関東、東海地方など全国から来られています。治療を行い症状が安定してきた場合には2~3カ月毎の通院となりますので、遠方の方でも受診していただくことが可能です。
患者さんの年齢層は5才位のお子さんから90才代の高齢の方まで非常に幅広いです。居眠り病とも呼ばれるナルコレプシーや過眠症、むずむず脚症候群などの睡眠障害は小さいお子さんでもかかることがありますので、親御さんに連れられて来られる学童期前のお子さんもいらっしゃいます。また、高齢の方では不眠症や夜間の異常行動などでお悩みの方が多く、90才代の方が来られることもあります。
眠れないとおっしゃって受診される方が一番多いです。眠れないとおっしゃる方は不眠症や概日リズム睡眠障害と診断されることが多く、ストレスや不安などの精神的要因を始め、身体的、環境的要因や生活習慣、持病で服用されている薬剤の影響など、様々な要因によって症状が起こり、お悩みになられています。他にも、ご家族の方にいびきをかいていると言われたり、息が止まっていると指摘されたりして受診される方も多いです。
睡眠障害の中でも特に専門としているのは、睡眠中の異常行動や異常運動です。具体的には、睡眠中に寝言を話したり叫んだりする、寝ぼけて歩く、激しく動くといった症状が挙げられます。発症する要因は様々といわれていますが、脳の運動を調節する機能の異常が影響していることが多く、なかにはてんかんが隠れていることもあります。睡眠中の異常行動や異常運動といっても、子どもに多いタイプ、成人に多いタイプ、高齢者に多いタイプとありますので、患者さんはお子さんから高齢の方までいらっしゃいます。
睡眠中の異常行動や異常運動に関する検査では、睡眠ポリグラフ検査という検査が主になります。睡眠ポリグラフ検査とは、睡眠中の脳波や体の動きなどの生理現象をモニタリングするもので、当院では一晩、入院をしていただき検査します。身体にモニターを装着して通常通り夜間眠るだけの検査ですので、もちろん痛みはなく、みなさん良く眠られています。必要に応じて、家庭での睡眠状況を調べるためにモニターを貸し出して自宅で検査を行ったり、他の医療機関でMRI検査を受けていただいたりすることもあります。
治療方法としては、原因となるような環境要因があり、それらを取り除くことで改善する場合もありますが、薬物療法が必要になる場合も多いです。薬物療法でよくなる方は多いですが、お薬の選択を間違えないようにすることが重要になります。現在、睡眠時の異常行動や異常運動に関する診療ガイドラインはなく、精神科医でも慣れていないと診療することが難しいため、睡眠障害を専門としている医師による治療を受けることが望ましいと思います。
治療によって9割以上の方で改善がみられています。しかし、治療のためのお薬や、マウスピースなどの器具が受け入れられないなどの理由で治療自体が難しい場合もあり、より負担の少ない治療を開発する必要があると感じています。
当然ながら、自分で自分の睡眠を客観評価することはできません。なので、患者さんの自覚症状を把握することはもちろん大切ですが、眠っている間に生じている症状など、自覚されていない症状についても見落とさないように留意しています。他にも、生活習慣が睡眠に悪影響を与えている場合も多く、極端な夜更かしや朝寝坊などによって、仕事や学校に行けなくなっている方もとても多いです。そのような生活習慣に関しても、問診などを通して拾い上げ、睡眠障害の原因を見極めるようにしています。
また、睡眠に関する症状は他の方からは見えにくく、軽視されやすい傾向にあります。例えば、眠り病ともよばれるナルコレプシーの患者さんでは、一日に10~20回も居眠りをしてしまい、他人からは怠けているように見られていることもありますが、これも疾患によるもので、患者さんにとっては大きなハンディになっているのです。睡眠に関してとてもお困りになっている患者さんは多いので、患者さんごとの問題点をしっかりと拾い上げ、受容・共有するように心がけています。
臨床だけでなく、研究にも注力してきており、これまで多くの時間を研究に費やしてきました。あと数年は、疾患の病態生理や治療方法について研究に取り組み、その後は啓発活動にも力を入れていきたいと考えています。特に、地域の啓発活動に力を入れていきたいと考えており、特定のエリアにあるコミュニティで啓発活動を行い、啓発活動にどのような効果があるかというのを実践のなかで調べていきたいと考えています。
なかなか眠れないということでお困りになっている場合には、まずはかかりつけの先生にご相談していただき、それでも改善しない場合には睡眠障害を専門としている医師のもとを受診されるとよいと思います。寝ぼけや寝言、睡眠中に身体が動くといった症状については、多くの方が一度は経験したことがあるかもしれませんが、それらが病的な状態なのか正常なのか境界を判断することは非常に難しいです。これらの症状はきちんとした検査によって診断する必要がありますので、このような症状を繰り返し、お困りになられている場合には、睡眠障害の専門医の先生に一度ご相談されることをおすすめします。
睡眠総合ケアクリニック代々木様は、多くの路線からのアクセスが良く、遠方から受診される方にも便利な立地にあります。睡眠に関して、「なかなか眠れない」、「朝起きられない」、「頻繁に悪夢をみて目が覚める」といった症状で悩んでいる方は多いかと思いますが、どのような医療機関に受診すればよいか悩んでいらっしゃる方も多いのではないでしょうか。井上先生がおっしゃるように、治療を開始する基準と治療法の選択は非常に難しいことかと思いますので、一度しっかりと検査を受けてみるとよいと思いました。
匿名での投稿が可能ですので、ご協力よろしくお願いします。