日本のヘルスケアシステムは現状、世界でベストなものの一つだと思っています。WHO統計では、平均寿命の長さ・新生児死亡率の低さともに日本が世界でトップであり、さらにそれがアメリカの半分程度の低い医療費で実現できているというのは素晴らしいことであると思っています。
しかし、そんな日本のヘルスケアシステムにも、高齢化の進行や高額医療の出現とともに様々なほころびがでてきています。例えば、低い医療費などは、「7割の病院が赤字運営」という実態に支えられていたり、病院で勤務する「医療従事者のサービス激務」により成り立っていたりもします。こうした事実に目を向けると、日本のヘルスケアシステムがどこかで破綻してしまうのではと不安を感じざるを得ません。
さらに、医療の高度化・専門化が進んだ結果、一般生活者にとって医療が「理解しづらいもの」「医師にまかせておけばよいもの」になってしまっていると感じています。みなさんの中にも、自分の症状がどの診療科に当たるのか、どの病院がよい病院か、自分の受けている治療が最適なのか、など判断に困った経験をお持ちの方が多くいらっしゃると思います。
私自身も医師として「家族が緑内障という病気になったんだけれども、どこを受診したらいいか」という相談を数多く受けてきました。知り合いのベテラン医師を紹介できればいいのですが、できない場合に期待に応えるべくウェブで検索しても、検索でみつかる医師がベストかどうかの判断はかなり難しいです。専門教育を受けていても難しいのですから、一般の方々にとってはなおさら判断が難しいと思います。こうした経験をきっかけに、「疾患ごとに名医が検索できるサービス」を立ち上げました。このサービスを通じて、一人でも多くの方がより良い医療を受けられるようサポートしていきたいと考えています。
また、適切な患者が一部の「名医」に集中することは、医療の質の向上・システムの維持にとっても、ポジティブなインパクトをもたらすと信じております。今日本で起こっている、「都市部での総合病院の乱立」→「病院間での患者の奪い合い」→「経験症例数の低下による医療の質の低下」・「医療機関の赤字運営」、という負の流れに歯止めをかけることもできるのではないかと思っております。
クリンタル創業者・医師