※掲載情報は独自の調査・分析により収集しており、最新かつ正確な情報になるように心がけておりますが、内容を保証するものではありません。
※実際に受診を検討される場合には、直接医療機関にもお電話で問い合わせいただくことを推奨いたします。
父が医師でしたし、親戚にも医師がおり、医師の仕事は幼い頃から身近でした。そのため、自然と医師になることを考えていました。
父は武蔵野赤十字病院で外科部長も務めた経験がありましたが、家庭の事情もあり開業をしました。開業すると大きな手術を行うことは難しく、医師として身につけた技術や経験を活かし切れていないせいか、何となく父の背中が寂しそうに見えました。そうした父の姿を見ていた事もあり、開業医になっても、大病院と同じように先進的な医療に携わり続けたいと考えていました。眼科医である叔父に勧められたこともありますが、そうした考えもあって眼科に進みました。
日本医科大学を卒業後、慶應義塾大学病院の眼科に入局し、眼科医として経験を積みました。ある日、出張先の病院でスチーブンス・ジョンソン症候群という薬害により全身に発疹が生じる重症疾患を診る機会がありました。この病気は全身の皮膚だけでなく、眼や口腔内にも水疱、びらんなどを起こし、場合によっては死に至る疾患です。当時まだガイドラインもない稀な疾患でしたので、治療法を調べて回っていたのですが、そんな時に丁度、アメリカ留学から帰国していた現慶應義塾大学眼科教授の坪田先生にも相談したことがきっかけでドライアイの研究に誘っていただきました。その後、坪田先生と現在日本医科大学眼科准教授を務められている小野眞史先生、私の三人で慶應義塾大学病院にドライアイ外来を立ち上げました。
その後、坪田先生の勧めでアメリカのマイアミ大学に留学し、涙腺に関する研究を行いました。マイアミでは臓器移植の際に角膜と一緒に摘出される涙腺を研究用に提供していただき、研究室で培養や薬剤刺激などの実験を行っていました
当時、帰国後は関連病院に出向することが通例でしたので、私も出向することが決まっていました。私は帰国後も研究を続けたいと思っていたのですが、出向先の病院には研究施設がありませんでした。その上、家庭の事情も重なり、どうすれば良いか悩んでいたところ、坪田先生から開業して基礎研究を続けることを勧められました。クリニックの場所も坪田先生が見つけてくれ、先生のアドバイスによって今があります。
開業後は朝4時には研究室に行き、日中は診療を行い、夜にまた研究室に戻るといった生活を送っていました。生活は予想以上にハードでしたし、基礎研究に費やせる時間も少なく、これではどちらも中途半端になってしまうと感じました。どちらかを選ばないといけないと考えた時に、私の元に来てくださる患者さんを疎かにするわけにはいかないと思い、基礎研究ではなく臨床研究に転向することにしました。今も研究の対象になりそうなテーマや症例がないか考えながら日々の診療を行っていますし、患者さんのデータをまとめて論文も書いています。
専門外来を設置していますが、一般の眼科診療も行っていますので、子供から高齢者の方々まで様々な方がいらっしゃいます。専門外来では、レーシック、ドライアイの方に対しての強膜レンズ、オルソケラトロジー、眼内コンタクトレンズ(ICL)、多焦点眼内レンズ白内障手術といった屈折矯正の診療を多く行っています。
毎日、多くの方がいらっしゃるので、診察室に待合室の状況が見えるモニターを設置し、常に混雑状況を確認しています。また、待っている間の負担を軽減するために、順番がきたらお呼びするシステムを導入し、受付後に外出ができるようにしています。
オルソケラトロジーは屈折矯正治療の一つです。就寝中に特殊なコンタクトレンズを装着し、日中はメガネやコンタクトレンズを装着しなくても過ごせるように角膜を矯正します。
日本での適応は原則20歳以上とされていましたが、20歳未満の方も慎重処方として新たに治療ができるようになりました。20歳未満の方も対象となった背景には、学童期の早い段階でオルソケラトロジーを行う事で近視抑制に一定の効果があるという研究データが海外で発表されたからです。現時点では国内での子供に対する臨床研究は行われていないため、ガイドラインでは子供への有効性については触れていません。しかし、近頃はインターネットで調べて治療を希望される親御さんも多くいらっしゃいます。
治療を希望される際には、事前に近視や乱視の度数以外にも角膜の形状やドライアイの有無、角膜上皮の状態などをしっかり検査し、オルソケラトロジーの治療が適切か判断させていただきます。
角膜の状態以外にも、子供の場合は本人や親御さんの適性も大切になります。子供の場合は大体、親御さんが管理する事になりますので、家庭での管理がしっかりできるかどうかも確認させていただいています。
コンタクトレンズの作成後は定期的に検診を受けていただきたいのですが、大人の場合、途中で来なくなってしまう方もいらっしゃいます。適正に使用しない場合、角膜感染症のリスクなどもありますし、定期検診で現在の管理状況や困っている事などきちんとフォローさせていただきたいですね。
オルソケラトロジーについては、重症ドライアイの患者さんのための強膜レンズメーカーの人に教えてもらいました。海外でのオルソケラトロジー治療について知るために、台湾の病院を訪ねて実際の治療を目の当たりにし、ぜひ日本にも導入したいと思ったので、自分の目のデータを基にした学会発表を行いました。最初は日本の医師からは厳しい意見も多く頂きました。オルソケラトロジーのメリット、デメリットも含め臨床試験の必要性を訴えても、臨床研究の価値はないと一蹴された事もありました。そんな中、海外の研究成果や筑波大学の平岡 孝浩先生による基礎研究の成果により、国内の臨床試験データが蓄積された事で徐々に理解も広がっていきました。現在では日本でもオルソケラトロジーが承認され、ガイドラインも作成されました。その際には私も作成委員長として携わりました。研究に関しては平岡先生には適わないですが、オルソケラトロジーを日本に導入し啓発を行った自負はあります。こうしてオルソケラトロジーによる治療を日本で広めることができたのは感無量です。
当院は専門外来から一般眼科診療と幅広く対応している事もあり、混雑時には十分な説明をする時間が取れない場合もあります。そんな中でも、なぜ提案した治療が必要かわかりやすく伝えたいと思っていますので、なるべく要点を押さえた説明となるようにしています。
また、屈折矯正の治療では、治療後の実際の見え方について丁寧に説明していきます。例えば、メガネを視力1.5くらいに合わせていてレーシックでも同じくらいの視力に調整したい、と希望される方もいらっしゃいます。しかし、その方が一日中パソコン作業を行うような職業の場合、視力を1.5まで調整してしまうと手元のピント調節が困難になり、眼が疲れてしまうことがあります。ひどい場合、頭痛や吐き気を起こしてしまう方もいらっしゃいます。見えすぎてしまう過矯正の状態に、他院で手術をされた患者さんが、視力を下げる手術を希望されて来院することもあります。
必要時に眼鏡で見ることと、起きてから寝るまで裸眼で見ることは違うので当院ではその方のライフスタイルにあわせた視力の検討を大切にしています。そのためにご希望の視力にあわせたコンタクトレンズをお渡しし、治療後の生活を体験してもらう事もあります。また、治療後に視力が弱いと感じる場合には追加調整も行っています。弱めの視力から追加調整する場合と過矯正から追加調整を行う場合では治療内容が変わりますし、眼の負担も異なります。極力過矯正になることは避け、もし弱い場合は希望に合わせて追加調整を行う方針にしています。説明や調整には時間も手間もかかりますが、納得して治療を受けて頂くことが一番大切だと考えていますので、膝と膝を突き合わせてとことん説明します。
この度、日本でオルソケラトロジーを正しく普及させたいという熱意のある若い先生達の声を受け、SOS-J(The Society of Orthokeratology and Speciality Lens - Japan)という研究会を立ち上げました。
まだ、立ち上げ段階ですが角膜矯正や強膜レンズなどの特殊なレンズだけでなく、装着する事で眼圧や血糖値をモニタリングできる屈折矯正以外を目的としたスマートレンズも対象にした研究会を作り上げていければと思っています。
私一人では何もできませんが地道にコツコツと活動してきたおかげで、こうして声をかけてくれる先生達もいらっしゃいますので、まだまだ引退するわけにはいきません。患者さんのためでもありますが、自分自身も楽しんで研究していければと考えています。
詳しく説明してくれない、説明がおぼつかないなどと感じる場合には、別の医師を探す事も良いと思います。口コミを参照することも良いと思いますが、口コミの内容をよく吟味する必要があります。レーシック治療などでは、手術をした医師の名前を知らないという方も多く見受けられますが、値段だけで決めることはせず、納得のいく治療を受けられる医師を探すことが大切かと思います。
吉野先生はレーシックやオルソケラトロジーといった屈折矯正治療の普及、啓蒙を行った第一人者です。普段から多くの患者さんを治療するなかでも丁寧に説明することを大切にしていらっしゃるため、取材中もとても解りやすく治療について教えてくださいました。診察から手術まで吉野先生が一貫して行われるとのことですので、安心して治療をお任せできると思います。
匿名での投稿が可能ですので、ご協力よろしくお願いします。