高校時代は中国の古典である荘子の本に感銘を受け、哲学や文学の道に進みたいと思っていました。しかし、私の親戚には歯科医師が多く、両親からの強い勧めも受けて医学部に進学しました。
医学部では入学当初から、精神科であれば哲学の知識が活かせるのではないかと思い、精神科医を目指していました。結果として、臨床の現場ではそれらの知識はあまり役に立たないことが分かりましたが、哲学を通じて得た知識や考え方は現在でも文章を書くときや人に何かを教える時に役立っています。
医学部を卒業してからは国立精神・神経医療研究センター武蔵病院(現在の国立精神・神経医療研究センター病院)の研修に進みました。精神科医としての日々が始まると、仕事を通して世の中には様々な悩みで苦しんでいる人が数知れずいることを痛感しました。死にたいというところまで追い詰められた患者さんを前に、苦しみや痛みを理解し、患者さんを元気づけ、少しでも楽にしてあげるという精神科医の仕事にはやりがいを感じました。後から思えば、お恥ずかしいことですが、周りには医師の親戚がいなかったこともあり、医学生時代の私は医師の仕事をよくわかっていなかったのです。しかし、固定概念や既成の価値観に囚われず、医師という仕事のあり方と向き合う事ができたので、今ではかえって良かったと思っています。
当院には子供から大人まで様々な方が訪れます。市内にお住いの方が多いですが、ありがたいことに、中には他県から訪ねて来られる方もいらっしゃいます。患者さんの7割くらいは女性の方になります。社会的な問題でもあるのですが、女性は更年期や月経があり、子育ての負担もあり、男性より、身体的、かつ社会的にもストレスにさらされやすい状況にあると思います。当院では心理検査も行っていますが、大人の方で発達障害のご相談にいらっしゃる方も増えてきています。
初めていらっしゃった方の場合、診察では30分程お話を聞かせていただきます。長く通っていらっしゃって経過が落ち着いている方などでは5分程度で診察を終えることもありますが、病状によってはしっかりと時間をとって診療させていただきます。
治療においては、当院では服薬は最低限に抑えることを原則にしています。症状の程度や疾患によってはお薬が必要な場合もありますので、環境の調整やカウンセラーによる心理療法など、様々なことを行った上でお薬の処方が必要なのであればお薬を処方しますが、薬に頼るだけの治療とならないように心がけています。
当院の隣にはデイケアも併設しています。スタッフには、患者さんのためになることは積極的に行うよう推奨していますので、スタッフが自発的に考えて行ってくれているプログラムも多くあります。クリニックもデイケアの職員も、カウンセラーも患者さんのために何かしたい、という熱意がある方しか雇っていないつもりです。
大阪で開かれた心理学の学会で凄腕カウンセラーの濱田恭子先生に出会い、先生のカウンセリング技術に感銘を受けました。先生が開発した、患者さんのあり方を認め、自己肯定感を高めるカウンセリング技術は必ず患者さんのためになると感じ、自身でもその技術を身につけるために、先生のカウンセリングルームがある大阪まで10年以上も通ったものです。
そのカウンセリング手法と出会い、効果的なカウンセリングのスキルを身につけることで、患者さんへの診療にも更なる手応えを感じるようになりましたが、それと同時にとても多くの患者さんが自分自身を否定してしまうことによって、お具合を悪くされていることがわかりました。濱田先生はカウンセリングの中で患者さんにカードを渡し、自分が元気になれる言葉を書き込んでもらっていたので、私も取り入れる事にしました。自覚していない人も多いのですが、人間は知らず知らずの内に否定的なことを考え、自分にとって悪影響となる自己暗示をかけてしまっていることがよくあるのです。また、人への恨みや憎しみと言った否定的な感情は、結局自身への憎しみにつながっていくことになります。そういった負の感情をなるべく患者さんから遠ざけていくことも精神科医の使命の一つだと思っています。カードを渡すことが、少しでも患者さんの認知を変えていく手助けになればと願っています。
カードに書く言葉は、既存の言葉もあれば、患者さんと共に作り上げていった言葉もあります。診療の中でお話を聞きながら、患者さんが少しでも自分自身を否定しなくなれるように、その方のお気持ちに寄り添い、思い出すだけで少しでも楽になれるような言葉をメモに書いて渡ししています。カードには、その方のために何かしてあげたいという願いやその方の治癒を心から信じていると思いも込めてプレゼントしています。
日々、私の診療を待っていてくれる患者さんがいらっしゃるのは大変ありがたいことだと思いますし、そんな患者さんの為にも誠意を持って対応すべきだと考えています。
これまで2、3度、診療の時間を惜しみ食事やトイレを疎かにした結果、尿管結石となり、その激痛から、救急車で運ばれてしまったことがあります。さすがに救急車で運ばれてしまうと待たせてしまっている患者さんに申し訳ないので今は最低限の食事や水分摂取を心がけていますが、当院に来ていただいている患者さんのことを思えば自分の時間は少しも惜しくありません。来ていただいている方々の人生に関わり、少しでもいい影響をもたらすことが何よりも大事なことだと思い、日々診療に当たっていますし、こんなにありがたい仕事はないと思っています。
患者さんは悩み苦しまれて受診されています。その方々に対し、薬を処方して話を聞くだけでは不十分過ぎると思いデイケアを開設させて頂きました。デイケアも含めていろいろな面から総合的に患者さんと関わることが重要と考えています。
精神医療は、この先生はわかってくれるという信頼がなければ成り立たないと思っています。残念ながら今の精神医療には、この「わかってくれる」と感じさせてくれる医師が少ないように感じる時があります。精神医療でよく問題とされることですが、患者さんが先生の当たり外れが大きい、先生は薬しか処方しないと感じてしまう状況がそれにあたります。
私は患者さんの喜ぶ顔が見たくて開業したようなものですので、患者さんが受診して良かった、悩みを話して良かったと思えるような医療を実践していきたいと思っています。これは難しいことではありません。目の前の患者さんのことを好きになり、家族のように愛情を持って診療を行うことは、当たり前のことだと私は考えています。重要なのは知識だけではなく、患者さんのために何かしたいという思いなのです。
この、言ってしまえば当たり前のことでもあるスタンダードな精神医療を確立していきたいと思っていますし、これからも患者さんのお話をよく聞き、当院に来て良かったと思ってもらえる医療を実践していきたいと思っています。
今年から医療や福祉に携わる方々を対象に患者さんを肯定するスキルを教えるカウンセリング講座をクリニックで開講しました。それもこのスタンダードな医療の普及に向けてのことです。そのために今自分ができることは全て実践していきたいと思っています。
精神科を受診される際は、必ず自分は良くなると自分の回復を信じてください。そして、それを信じさせてくれる先生の元を訪ねてください。少しでも良くなって欲しいと願い、あなたに興味を持ち、あなたのことを好きになってくれ、心の底から何かをしてあげたいと思ってくれる医師を受診してください。
鹿島先生からは精神科医、医療職としての心構えやプロとしての意識、技術に関してお話を伺うことができました。先生は時に厳しい目線で話されることもありましたが、それだけ患者さんのことを真摯に考え、患者さんにとってより良い医療を提供することに対して真剣なのだと感じました。インタビューを通じて、先生の精神医療に対する情熱を感じることができました。
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鹿島 直之先生の口コミ
病院の雰囲気も過ごしやすくて、なおかつ奇麗なのが良かったです。駐車場も直ぐ近くにあったので助かりました。
私の場合、何度か通いましたが、自分が思っていた改善が出来なかったので相性が合わなかったのかなと思いました。
私が担当してもらったのは、副院長の樋之口先生だったのですが、私の生い立ちから普段の悩みまで全てシッカリ聞いていただけれ、優しく答えてくれました。
お話の途中で、一度だけ先生がお手洗いに行かれたことがあったのですが、帰ってこられた後は、少し間が空いたので、先ほどまでの集中力が切れてしまいました。
受付の方が次回の予約説明や清算などの際、丁寧で言葉使いもシッカリしていて気持ちよく帰れました。
初めて行った際に車の止める場所がわからなく、途中車を止めて電話をしたのですが、駐車場の場所の説明がザックリ過ぎて結局わかりずらかったです。
外観の周りもゴミ一つなく掃除されていて、中も奇麗で精神科だけあって、落ち着きのある色で統一されていました。
施設自体、すごく奇麗でゴミも落ちていなく過ごしやすかったのですが、お茶などが飲めるコーナーのゴミ箱に紙コップが一杯になっていたままになっていたのが残念でした。
初診の予約を電話で取りました。精神科が初めてだったので緊張しましたが、電話での対応も丁寧に対応してくれるので安心感がりました。
初診の予約を取ろうと連絡をしたのですが、なかなか空いてる日が無く、だいぶ先の予約になってしまったので待ってる期間が長かったです。
予約を取って診察までの待合室では、ゆったりした空間でお茶やコーヒーなどが無料で飲めたのが有難かったです。
予約を取って時間通りに行ったのですが、時間よりもだいぶ待たされての診察になったので、待ち時間が長かったです。
初診時は時間通りに呼ばれて、その間も雑誌なども自由に読めて過ごしやすかったので、穏やかな気持ちになれました。
通院期間中、待たされることもあったのですが、待合室に一人用の椅子が並んでいるのですが、隣との距離が近く待ってる間少し苦痛だった。