※掲載情報は独自の調査・分析により収集しており、最新かつ正確な情報になるように心がけておりますが、内容を保証するものではありません。
※実際に受診を検討される場合には、直接医療機関にもお電話で問い合わせいただくことを推奨いたします。
私の家は代々医師の家系であり、私は4代目に当たります。幼い頃から医師として働く父の背中を見ていました。医師になることに抵抗はありませんでしたが、文化人類学に興味を持っていたこともあり、東京大学の理科II類に進学し、当時の文化人類学の助教授の先生の元にも相談に行きました。しかし、先生からは調査で海外の現地に入る際、医師免許があると信頼度が高く、何かと便利だからと医師免許を取得することを勧められました。そこで3年次に試験を受け医学部に進学しました。将来は発掘などを行うつもりでいたので、骨学の勉強には力が入り、同級生からは不思議がられたりもしました。しかし、医学部で日々、勉強する中でいつの間にかそうした目標は忘れていました。そして、脳解剖の勉強が楽しくなってしまい、解剖学の授業で脳の構造を学ぶだけでなく、東京医科歯科大学の教授であった萬年甫先生の元で脳のスケッチをさせてもらったりしていました。
私が在学中に東京大学に初めて神経内科講座が開設され、初代教授として豊倉康夫先生が就任されました。私は先生の素晴らしさにすっかり魅せられ、卒業後は豊倉先生のいる神経内科の入局を希望していましたが、卒業前年から東大闘争が始まってしまい、とても大学病院に残れるような状態ではありませんでした。そこで、先ずは虎の門病院で2年間の研修を受け、その後に東京大学の神経内科へ入局しようと考えました。しかし、2年経っても状況は変わらず、研修修了後は東京医科歯科大学の解剖学講座で萬年先生の助手として2年間を過ごしました。東京医科歯科大学では、学生たちに脳や末梢神経、筋肉の構造を実際に見せて教える仕事をしていたのですが、その当時の経験は、その後に神経内科医として働くうえでも非常に役立ちました。また、萬年先生の他にも三木成夫先生など、個性豊かで素晴らしい先生方と仕事ができ、非常に勉強になりました。
その後、東京大学附属病院に戻り、神経内科医として経験を積みました。東京大学では私の師匠でもある豊倉先生から「自分の得意の病気を作ってはいけない。どんな病気の人も同じように診ることができる力を持ってください。」と教えられたので、苦手意識のある病気を作らず、どんな病気も診ることができるよう務めました。
そして、東京女子医科大学病院で教授を務めた時も、どんな病気の人が来ても自分たちの科で治療が行える体制にしようと常々スタッフに伝えていました。その結果、東京女子医科大学病院では自身の専門性に囚われず、神経内科に関わる疾患は全て診る方針を取りました。東京女子医科大学病院では素晴らしいスタッフ達と仕事ができたと思っていますし、その時の経験がなかったら私の人生はここまで面白いものにはならなかっただろうと思っています。
神経内科に関する疾患であれば何でも診るようにしていますので、認知症だけでなく、パーキンソン病やアルツハイマー病、頭痛などもみていますし、年齢も10歳以上であれば診察しますとお伝えしています。患者さんは主に近隣からいらっしゃることが多く、70代以上の方が多いです。
疾患としては認知症の患者さんが多く、1/4程度を占めます。認知症の患者さんは2〜3ヶ月に1度のペースで受診されることが多いのですが、自宅での状況などを把握するために、必ずご家族の方と来院するようにお伝えしています。
認知症の患者さんと接する際には「この先生とお話しすると楽しい。」と思ってもらうことが重要だと考えています。定期的に通院していただくためにも、診療中の会話から信頼関係を築くことが大切だと考えています。
また、認知症患者さんのかかりつけ医になりたいと考えています。当クリニックに通う認知症患者さんについて調べたところ、平均して3つの病気があることがわかりました。認知症だけがある患者さんは滅多にいないのです。認知症で亡くなることはありませんが、持病によっては適切な治療を行わないと死に至ることもありますし、入院加療が必要になることもあります。患者さんが入院された際に認知症によって不慣れな環境に適応できず、パニックを起こしてしまい、予定していた治療や手術が受けられなくなってしまうことは非常にもったいないことです。ですので、認知症と診断した患者さんとそのご家族には、入院した際はすぐに私に知らせてくださいと伝えています。ご家族に不慣れな環境に適応するためにどうすれば良いか指導し、入院先の医師と情報共有を行い調整していく。これが認知症患者さんのかかりつけ医として果たす役割だと思っています。
患者さんを取り巻く環境をオーケストラで例えると私は指揮者の役割を担っているイメージです。団員一人の腕が良くてもオーケストラは成立しません。皆の調和が取れて初めて音楽が成立するように、一人ひとりの技術と連携により医療も成り立つと思っています。
いくつか方法はありますが、当クリニックでは区の健康診断も実施していますので、まずは健康診断に行きましょうと言ってみてください。
実際に自分の家族が認知症ではないかと悩まれている方にそう伝えた結果、外来にいらしたことがあったのですが、健康診断でたまたま肝機能障害が見つかり、以後、定期的に経過を診させていただきました。診察の中で患者さんから様々なお話を伺っていると、ある時、ご本人から最近、認知症が心配なのだと言われ、それをきっかけに認知症の診断に至りました。
認知症が心配だから診てもらいに行きましょうと言うとその方から反発が来るのは当然だと思います。私だって行きたくないです。先ずは、ちょっと健康診断に行ってみようと、軽い気持ちで来ていただけるようにすると良いのではないかと思います。
患者さんには、自分の症状や異常を正確に表現する力を身につけてほしいとお伝えしています。医師は患者さんにとっての道具のようなものだと思っています。私たちも良い医師になろうと日々努力していますが、患者さんにもその道具を使いこなせるようになっていただきたいと思っています。
例えば、めまいや痺れを訴えられる方がいますが、「めまい」と一言で言っても、周囲が回っているように感じるのか、自分が回っているように感じるか、様々な感じ方があります。もちろん、患者さんから症状を聞き出すには医師側の問診技術も大事なので、医師側にも努力する必要があると思います。しかし、正確に症状を表現する力がないと、いくら良い医師にかかっても無意味になってしまいます。検査を受ければ何でもわかると思われる患者さんもいらっしゃいますが、検査はあくまで診断の裏付けのために行っているにすぎません。
単に難しい言葉を覚えてくださいという意味ではなく、自分の症状を初めて会った医師にどう表現するかを身につけてほしいと思っています。
岩田先生は解剖学を基礎に神経内科のあらゆる疾患を診てこられた先生ですが、とりわけ認知症の分野では豊富な知見をお持ちの先生です。幼い頃から音楽に慣れ親しんでおり、現在もオーケストラ楽団に参加しコンサートなども行っていることもあり、インタビューでは患者さんとの関わり方をオーケストラに擬えてお話くださるなど、先生との会話はとてもユーモアに富み穏やかな時間となりました。認知症のかかりつけ医になりたいと話される先生からは、認知症患者さんや家族が抱えがちな孤独感を包み込んでくれるような暖かさと優しさがありました。
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